※この作品は、偉大なる人妻絵師(尊敬するほっぺチチシリパンツ職人)
 ZEN氏の作品に激しく感動した私あのじが、ZEN氏の許可を得て
 書かせて頂きました二次創作(三次創作?)です。

 私の文章力の不足にて、皆様のイメージを壊す恐れがあります
 それでも良いというかたのみ、ご笑読いただければ幸いです。
 

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・二人の時間編

                           2005 あのじ


「序章」

 優しいハミングが、綺麗に整えられたキッチンに流れている。
 手際よく、夕食の後かたづけをしている女性が、この水瀬家の主、
水瀬秋子である。
 腰までとどく、つやのある髪をお下げにして、いつも優しく微笑んでいる姿は、
どこか少女のような無邪気な雰囲気と相まって、20代・・・場合によっては
10代にも見える。
 ・・・実際の年齢を知っている者は少ない。その追求は、水瀬家において、最大の
タブーの一つでもある。
 一人娘である水瀬名雪と並んで買い物に出かけるときなど、女子高生である名雪と
姉妹だと間違えられることもよくある。
 とらえどころのない性格と、様々にミステリアスな部分を持つ美貌の人妻、
水瀬秋子女史は、物騒な決心を心に秘めて、その日、洗い物を終えるのだった。

 リビングのソファでは、彼女の甥に当たる、相沢祐一が平和な表情で居眠りをしていた。
 一般平均的に見て、ごく無難に整った顔立ちの、少年である。
 だが、この少年は、この雪に包まれた北の町で、いくつかの事件を経験し、いくつか
の生死の境を駆け抜け、いくつかの人生を、大幅に変えた。
 そして、その結果、何人かの女性に、人生そのものを掛けたような、熱烈な愛情を
向けられることになる。
 
 世間一般の男性であれば、うらやましさに歯ぎしりするような状態ではあるが、
「複数を」「同時に」となると、なかなかこれが笑ってすまされるような状態ではなくなってくる。
ましてや、その状況に、「運命的な出会い」等という単語が含まれてくると、まことに
物騒な状態となってくるのであった。
 クリスマス。お正月。バレンタインデー。ホワイトデー。
 世間の学生たちにとっては、決意や熱意や失意が飛び交うイベントの時期なると、彼の周囲は
異様な熱気が包み、反比例して彼の顔色はどんどん悪くなっていったりした。

・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・

 数週間前・・・
「抜け駆け禁止」「機会は公平に」「薬物・力ずく禁止」「夜討ち朝駆けは駄目」
 などという単語が乱れ飛び、ちょうど休日だった今年の2月14日には、件の少女たちが
そろって水瀬家にやってきて、それはそれは素晴らしい笑顔で気合いのこもったチョコレートを
投下したりしていた。
 冷や汗を浮かべた祐一の眼前に、色とりどりのラッピングを施された箱。
「祐一、私のいちごチョコ、絶対美味しいから!」
「・・・お菓子の手作りは、初めてです。味は期待しないでください。」
「佐祐理と一緒につくった。アリクイさんの形。」
「あははーっ、佐祐理のはブタさんの形ですよー。」
「らしくないかもしれないけどね。たまには、イベントを楽しむのも、悪くないでしょ?」
「え、えぅー・・・私のが、一番小さいんですけど・・・甘いものには、それなりにこだわりが・・・」
「ボク、この日のために、特訓したんだよっ!大丈夫、今度こそ!」
「あう・・・真琴だって!秋子さんに教えてもらって、頑張ったんだからー!」
 じり、と後ずさる祐一に、銃口のように突きつけられる各種のチョコレート。
「「「「「「「「さあ!」」」」」」」」
 
 こういった風景が展開されるたび、祐一は、自分の叔母であり、家主である水瀬秋子女史の
元に、時には待避し、時には相談を持ちかける。
 年長者で、人生経験も豊富、さらに聞き上手で、穏やかな雰囲気を漂わせている「秋子さん」
は、彼にとって、得難い相談相手だった。さらに、「叔母」「人妻」ということで、
安心感もあったのだろう。

「・・・秋子さん、なんか、俺、怖いです・・・」
「あらあら・・・」
 騒動も一段落し、帰宅組は家に戻り、水瀬家在住組はそれぞれの部屋にやっと引き取って、
ようやく一息つく祐一。律儀にも、しっかりチョコを全員分食べたらしく、顔色が土気色に
近くなり、鼻には真っ赤に変色したティッシュがねじ込まれている。
 秋子女史は、冷たいミネラルウォーターの入ったグラスを差し出して、ソファの隣に腰掛ける。
いつもは、下手な喫茶店は裸足で逃げ出す、美味しいお茶かコーヒーをいれてくれるのだが、
カフェインと糖分の過剰摂取後には、流石にこちらの方が良いと思ったようである。
「・・・ありがとうございます、秋子さん。」
「うふふ・・・おつかれさまでした。」
 ありがたく、冷たい水を一息に飲み干して、ぐったりと礼を言う祐一。それを眺めて、
秋子女史は、とても柔らかい手つきで、祐一の髪を撫でて微笑む。
 考えてみれば、高校生になった甥にはすこし不釣り合いな行為かもしれないが、祐一は、
肩の力を抜いて、心地よさそうにため息をつく。
「・・・あいつら、なんか、勘違いしてませんか?」
「あらあら、どうしてですか?」
「なんで、俺なんかを追っかけ回すんでしょう・・・
 そんなに、顔が良いわけでも、背が高いわけでもないのに・・」
 目を閉じたままの祐一の声に、くすくすと微笑む秋子女史。
「いいえ、祐一さん。彼女たちの目は確かですよ?」
「?」
「彼女たちは、恋愛相手を無闇に求めているわけでも、外見が良い相手を求めているわけでもないです。
 祐一さんが、祐一さんだから・・・・本気で結ばれたいと思ってるんですよ。」
「・・・買いかぶりです。
 ・・・それに、もしそうだったとしたら、そっちのほうが気が重いです・・・」
 さらにぐったりしてうめく祐一に、微笑みを混ぜた、秋子女史の声。
「私だって・・・もっと若くて、もし、独り身で。親戚じゃなかったら、同じことをしてたかも・・」
「そんな!秋子さん、いまだって、十分若くて綺麗ですよ!」
「あらあら・・・もう、祐一さんたら・・・お世辞でも、とても、嬉しいです。」
 少女のように、頬を赤らめて、嬉しそうに眼を細める秋子女史。
「お世辞じゃないですって。
 ・・・ああ、本当に・・・・秋子さんが・・・・親戚じゃなかったら、理想的だったんですけど・・・・」
 どきんと身体を震わせる秋子。
 気付かれないように、何度か呼吸を整えて、もう一度聞き返そうとした秋子女史は、
祐一が、静かに寝息を立てているのに気付いて、その言葉を飲み込んだ。
 起こさないように気をつけて、そっと立ち上がると、毛布を持ってきて、ふわりと祐一の
身体をくるんだ。
 そして、頬に手を当てて、数秒間考えこんでから、小さな声で、祐一の耳元にささやいた。

「・・・本気に、しちゃいましたからね、祐一さん。」

 そして、ほんの一瞬だけ、祐一の頬に口づけをすると、そっと身を離した。

・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・


「第一章」

 そして、その日。
 水瀬秋子女史は、片づけをおえて、するりと愛用のエプロンを脱ぐ。

小学生時分ビックリマンのノアフォームが好きだった俺は昔から人妻属性があったようです

「うふふふ・・・」
 普段は、水瀬家のものが眼にすることのない、魅惑的な微笑みを浮かべて、ワインカーヴから、
とっておきのアイスワインを注意深く引き出す。
 金曜日の今日、「人の三倍眠る」娘、水瀬名雪はすでに夢の中へと旅立ち、生活サイクルが
ほぼ小学生と同じ養女、月宮あゆもまた、すでにベッドの中。そして、もう一人の養女である
沢渡真琴は、親友である天野美汐の家に泊まりがけで遊びに行った。
 実際は、このシチュエーションを整えるために、秋子女史は少なからぬ努力を払ったわけだが、
それは余談。
 そして、アイスワインの瓶をリビングのテーブルに静かに置くと、ワイングラスを二つ
並べる。手製の幾種類かのチーズに、生ハム、サラミなどのおつまみも準備して、
ソファで平和そうに眠り続ける・・・少女たちからの「過酷な」視線から解放されていること
もあって・・・相沢祐一のとなりに、ちょこんと座り込んだ。
 そのまま、幸福そうに、にこにこと祐一の寝顔を見つめていたが、少し名残惜しそうに、
そっと祐一の肩を揺さぶった。


「祐一さん、祐一さん・・・」
「・・・ん・・・あれ・・・秋子さん・・・」
「おはようございます、祐一さん。」
 祐一は、目を覚ますと同時に、目の前に、秋子女史の笑顔を見て、ちょっとどぎまぎする。
「あ、あ・・・おはようございます・・・・」
 そこで、相手に少しだけ近づいて、言葉を続ける秋子女史。
「あの、祐一さんに、お願いがあるんですけど・・・」
「俺に、ですか?」
 祐一の記憶の中では、秋子さんに「お願い」されたことというと、「お風呂掃除」「おつかい」
「電球の取り替え」程度だが・・・
 祐一の表情をみて、いたずらっぽく微笑む秋子さん。
「つきあって、もらえませんか?」
 背中に回していた手には、さっき用意した、アイスワインのボトルと、ふたつのワイングラス。

間取りとかは知らん

「秋子さん!俺、未成年ですよ?」
「うふふ・・・今日は、保護者公認です。
 姉さんに聞きましたよ、日本酒とワインなら、かなりいけるんですよね?」
(・・・秋子さんになんてことを教えてるんだ、あの母親は・・・)
 顔を押さえてため息をつく祐一。
「ええまあ、確かに・・・でも、何でいきなり?」
「ちょっとした、お祝い、ですよ。」
 そして、ちょっと寂しそうに、微笑する。
「わたし、もともと、お酒は結構好きなんですよ?でも、一人で飲むのは、あんまり
好きじゃないですし。いままで、一緒に飲みたいと思う人も、いませんでしたし。
 ・・・やっぱり、ご迷惑でしたか?」
「まさか、そんな!いままで、秋子さんがお酒飲んでいるところって、見たこと無かったから、
ちょっと驚いただけですよ。」
 あわてて手を振って、グラスを受け取る祐一。
「・・・俺でよければ、おつきあいさせてもらいますよ、秋子さん!」
「嬉しいです、祐一さん!」
 ぱぁっと、輝くような笑顔を浮かべる秋子女史。

 ただ、その時、すでに、彼女の計略が発動していたことを、彼は知らない。



「第二章」

(秋子さんって、こんにな、色っぽかったっけ・・・・)

 なんの「お祝い」か聞きそびれたままの、静かな乾杯のあと、二人きりでの
ささやかな宴は続く。秋子さんが用意してくれた、美味しいおつまみと、
渋みが少なくて、とても飲みやすいワインを楽しむうちに、未亡人の
艶やかな姿に、知らず知らずに視線が吸い寄せられてしまう。
 祐一の知る水瀬秋子の姿は、穏やかな美しさと、優しい暖かさで、その印象のほとんどが
占められている。(ところどころ、ちょっと変なところがあったりするのは、
流石に名雪の母親というところだが。)
 だが、今晩の彼女は、アルコールのせいだろうか、普段はあまり感じられなかった、
「大人」や「女性」、さらには、「艶」等という雰囲気が、しっとりと
にじんでいるような気がする。
 この北の町に引っ越して以来、様々な美女・美少女に巡り会ってきた祐一だが、
その彼の目にも、今夜の秋子さんは、掛け値無しで魅力的だった。
 水瀬家のリビングのソファに、並んでくつろいで、談笑しながらグラスを
重ねていたのだが・・・・ちなみに話題は、ほとんどが祐一を取り巻く少女達のことだが・・・
祐一が意識しないうちに、秋子女史は、僅かずつ、距離を詰めていた。
いまは、もう、肩と肩、足と足が触れあうほどになっている。

「あらあら・・・祐一さんって、贅沢ですねぇ。」
「いや、その・・・」
 おかしそうに笑いをこぼす秋子さんの、間近に迫る胸元にどぎまぎする祐一。
 普段はあまり目立たないが、彼女のバストはかなり豊かで、しかも形良く
整っているのが、ここまで近寄ると、はっきりわかる。
 ちょっとした動きて、その胸が躍動的に弾むのが、薄手のセーター越しにも
視認出来て、祐一は、いやでも意識してしまう。
(もしかして、ブラ、してない・・・・)
 そして、その瞬間、祐一の思考を読んだように、秋子女史が身を乗り出して、続きを促す。
「それで、どうなったんですか?」

 ふにっ

 祐一の肘に、秋子さんの胸が押しつけられる。
(!!!)
 その、感触と体温に、一瞬フリーズする祐一。
「・・・祐一さん?」
「は、はいっ!」
 至近距離から、上目遣いに微笑まれて、思わず直立不動で返答する祐一。
「え、あ、その・・・それで、栞が、壁に張り付いて盗聴して・・・て・・・・
 ・・・あれ・・・」
 不意に、重力が変調したような感覚に、ぐらりと傾く祐一。
「・・・おか・・・しいな・・・一本ぐらいじゃ・・・こんな・・・・」
 祐一は、一応、自分の酒量は知っているつもりだった。まだ、2.3杯程度しか、
今晩は飲んでいないのに・・・
「あら、祐一さん。もう、酔ってしまわれたんですか?」
 ぐるぐると回り始めた視界の奥で、いたずらっぽい、秋子さんの声。

 ふにょんっ

 そして、顔全体が、柔らかくて、暖かくて、良い匂いのするものに包まれた。
「あ、あきこ、ひゃん・・・」
「あらあら・・・祐一さんったら・・・・」
 嬉しそうな秋子さんの声が、消えていく意識の端に引っかかった。

「ごめんなさいね、祐一さん。」
 くすくすと笑いながら、秋子女史は、自分の胸の谷間に、顔を埋めて意識を失ってしまった、
甥の身体を・・・そう、引き締まって無駄のない、少年の熱い身体を・・・愛しげに
抱き直した。彼が倒れかかったときに、思わず、自分の胸で抱きとめてしまったのは、ご愛敬。
「うふふふ・・・」
 抑えても、あふれてくる微笑みを、もう、止められないし、止めたいとも思わない。
ソファのクッションの下から、無記名の錠剤のシートを取り出して、全部使い切って
空になっていることを確かめて、ごみ箱へ。

 ・・・ずるいし、卑怯だし、相手の意思は無視してるかもしれないし。
 いってみれば、自分の欲望しか考えていない、犯罪行為。
 そして、肉親。
 法のみならず、倫理の面からも、許される行為ではない。
 
 でも、かまいません♪

「夜は、これからですよ、祐一さん・・・・」

 水瀬秋子女史は、愛しい甥を、嬉しそうに「お姫様だっこ」すると、寝室へ・・・
そう、自分の寝室へ、向かうのだった。





「第三章」


「よいしょ、よいしょ。」
 にこにこと、これ以上ないほど楽しげに、自分の寝室に、抱き上げた祐一とともに
入る秋子女史。
 そっと、自分のベッドの上に、大事そうに祐一を横たえる。
 その、無防備な寝顔を、満足そうに見つめる。
 見つめ続けているうちに、だんだん、息が荒くなってきているが、秋子女史本人は
気付いていない様子。
 幼児のように、身体を丸め、横向きになった姿勢の祐一をみて、今度は、ゆっくりと反対の
背中側に回り込むと、彼がナイトウェアにしているスウェットのお尻に、そっと触れてみる。
しなやかな筋肉の感触と、アルコールの摂取で上昇した体温。
 最初は、軽く撫でていただけだったのだが、だんだんと、息が荒くなってくる。
 感触を確かめるように撫で、揉み、まさぐり、こすり、愛撫して・・・
「ふーっ・・・ふーっ・・・」
 背中をまくり上げて、素肌に唇で吸い付こうとした瞬間、はっと我に返って後ずさる秋子さん。
「いけない、つい・・・ちゃんと準備しないと駄目なのに・・・・」
 名残惜しげに離れると、いそいそと部屋を出ていくのだった。

 そして、素早く、実質的に二人だけとなっている家の戸締まりを、もう一度、再点検する。
玄関、リビングの窓(雨戸含む)にそれぞれしっかり施錠を確認し、名雪の部屋と、
真琴とあゆの相部屋は、あらかじめ用意していた予備鍵を、「外側から」厳重に掛ける。
 さらに、トイレの小窓や猫のぴろ用の出入り口まで、抜かりなく鍵をかけると、
決意をあらわにした表情で、祐一の眠る、自分の寝室へと向かうのだった。

 軽く閉じられた瞼。
 やや細めの、濃い眉と、少しだけ癖のある、さらさらした黒髪。
 どちらかといえば目立たない、穏やかに整った顔立ち。
 それが、無防備に、目の前にある・・・

 照明を絞った薄明かりの中、水瀬秋子女史は、自分の甥の寝顔を、熱をはらんだ視線で、
ゆっくりと撫でていた。
 ただ、指で触れ、見つめているだけで、頬が熱くなり、鼓動はどんどん早くなっていく。
独り身になってから、ずっとずっと忘れていた、身体を締め付けられるような、切ない感触だった。
(もっと・・・ずっと、こうしていたいけれど・・・・)
 時間は、無限にあるわけではない。
(薬の効き目ももうすぐ切れますし・・・)
 物騒なことを考えながら、そっと、祐一を、仰向けの姿勢にする。思い出したように、
部屋の暖房の温度を、高めに設定すると、祐一の上に、かがみ込んだ。
「祐一さん、あの、それじゃ・・・失礼します・・・・」
 そして、注意深く、祐一のスウェットを脱がしていく。
 スウェットが床の上に落ち、Tシャツがその後に続いた。
 そしてズボンがさらに重なり、その後、しばらくの沈黙。
 数十秒後、祐一のトランクスが放り投げられた。

「ああ・・・祐一さん、祐一さんの、からだ・・・・」
 特定のスポーツに、打ち込んでいたわけではないはずだが(そう言えば、木刀で素振りを
しているのは見かけたことはあった)無駄のほとんどない、やや細身の、引き締まった体つき。
 腹筋がしっかりと線を浮き上がらせている腰にそっと手を触れさせて、感嘆のため息を
つく秋子女史。
 そして、その下は・・・・
(はぁっ・・・・)
 思わず、今度は自分がめまいを起こしそうになって、踏みとどまる。
「・・・記念を、残しておきましょう・・・」
 棚の中を探って、ごつい一眼レフのカメラを探り出すと、フィルムと設定を確かめて、
軽やかに位置をかえながら、立て続けにフラッシュをたく秋子女史。
 一部分に位置を固定してさらに24枚のシャッターを切りおえたときは、彼女の、
理性の糸もぶつりと切れてしまっていた。
 某怪盗の3代目のごとく、一瞬にして彼女の着衣が宙を飛び、先ほど床に落とされた
祐一の服の上に重ねられる。
 薄闇の中で、妖精のような、一糸まとわぬ裸体が、ほの白く浮かび上がる。
 全体的にはほっそりとしていながら、胸や腰、そして太ももは、豊かな女性らしい
線を描き出している。雪国育ちらしく、真っ白な肌は、興奮とワインのせいか、
ほんの少し、薄桃色に染まっている。
 誰一人目撃者はいないわけだが、もし仮に、「恋敵である少女達」が目撃していたのであれば、
あるいは唖然とし、あるいは神の不公平さを恨み、あるいは血がにじむまで歯ぎしりしたかもしれない。
 そして、秋子女史は、祐一の眠り続けるベッドに、素早く、しかし、細心の注意を払って、
滑り込む。そして、ゆっくりと、全裸の祐一の上に、覆い被さった。
 その瞬間、静かに眠り続ける祐一の顔を、真正面からのぞき込む姿勢になった。
「あ、あのっ・・・」
 今さらかもしれないが、途端に、恥ずかしさがこみ上げてきて、ぽぉっと頬が上気する。
 思わず、手で自分の目を押さえる。
「んっ・・・」
 ついで、ぴったりと密着した、祐一の肌の感触に、思わず声が漏れる。
「はぁ・・・はぁ・・・」
 反射的に、大きく深呼吸した瞬間、とどめとばかりに彼女を捕らえたのは、
祐一の肌の匂いだった。

「もう・・・もう、がまんできませんっ!!」

 がばっ!


 深夜にもかかわらず、水瀬家の周囲の鳥たちが、一斉に羽ばたいた。

 次々に、町の犬たちが、夜空に向かって長く長く尾を引く遠吠えをあげた。

 ウサギの耳ヘアバンドの手入れをしていた黒髪の少女が、不穏な気配に顔を上げた。
 同室で優雅に紅茶を楽しんでいた少女は、突然、カップに走った亀裂を、不思議そうに眺めていた。

 親友の胸で安心して熟睡していた少女と、その頭に乗った猫が、不安げに目を覚ました。
 
 お風呂上がりに、姉に髪をとかしてもらっていた少女の、アイスのスプーンが突然折れた。

 同じ屋根の下にいるロングヘアとショートヘアの二人の少女は、何も気付かず、平和に眠り続けていた。


 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・


 夢・・・ 
 夢を見ている・・・・

 とても・・・
 とても、優しい夢を・・・

 いつも、冬の訪れとともに見る、あの、白と赤の夢じゃない・・・
 とても、優しい夢を・・・・


 祐一は、しっとりとした、柔らかな感触に、ゆっくりと目を覚ました。
(・・・ここは・・・)
 薄闇に包まれた部屋の天井には、特に見覚えはない。視線をゆっくりと
巡らすが、あまり見たことのない内装だ。いや、確か、一度か二度、
見たことがある。確かここは・・・
 と、自分の左腕にかかっている重みと、その感触に気付く祐一。
 女性の、白い腕。ゆっくりと視線をずらしていくと、鎖骨がとても綺麗な肩、
そして、うつぶせになった、美しい黒髪の女性。
 長い髪を解いて、とても幸福そうに静かな寝息を立てているのは・・・
髪型と表情で、一瞬、わからなかったが・・・彼の美貌の叔母、水瀬秋子さんだった。


( ゜д゜) ・・・・

(つд⊂)ゴシゴシ

(;゜д゜) ・・・・・・・

(つд⊂)ゴシゴシ
  _, ._
(;゜ Д゜) …?!


「ナンデ アキコサンガ ゼンラデ ココニ イルンデスカ?」

 脳裏を駆けめぐった疑問が、機械的に口から流れる。
 思考停止の状態で数秒。
 祐一は、とりあえずの結論を出した。
(夢だ。)
(嬉しい夢だ。いろいろ問題があるが。)
(酔いつぶれて、こんな嬉しい夢を見たんだ。)
(夕べの秋子さん、色っぽかったもんなあ・・・・そのせいだな。)
 肩まで布団をきちんと掛け、姿勢を正して、呼吸を整え、もう一度、目を閉じる。

 ちゅっ
 彼の抵抗を笑うかのように、頬に、熱い点が生まれる。

 それでも、なおも、しっかり眼を閉じ続ける祐一。
「おはようございます、祐一さん。
 ・・・うふふ、とっても、素敵でしたよ。」
 とりあえず、片眼だけ開いて、そーっと横目でそちらを確認する祐一。
 先ほどの祐一の動きで、目を覚ましたのか・・・うつぶせの姿勢で、婉然と微笑みかける、美貌の叔母。
 祐一は、開けていた片目を、また急いで閉じる。

(なんてリアルな夢・・・)
(早く覚めないと、起きたときに下着の中が大変なことになる恐れが・・)

 ぎっ、とベッドが軽く軋む音。秋子さんが、身を起こしたらしい。
「祐一さん・・・祐一さんったら・・・」
「もしかして、夢だと思ったりしてませんか?」
 声といい、発言の内容といい、肩を優しく揺する手の感触といい、不必要なまでに、とても具体的なものだ。
「うふふふ・・・」
 自分の手が、そっと持ち上げられた。

 ぷにゅっ

(こ・・・この感触はっ・・・)
 がばっ!
 突然の感触に、思わず跳ね起きた。見開いた目には、秋子さんの、白い豊かなバストに
押しつけられている、自分の左手・・・
「あんっ・・・」
 思わず感触を確かめるように動かしてしまった祐一と、嬉しそうに身をよじる秋子女史。
自動的に、秋子さんの、女神のような裸体をしっかり目撃してしまい、全身が硬直する祐一。
 祐一の視線を確認して、嬉しそうに、そして少しだけはにかんで、少女のように微笑む秋子女史。
「へへぇ♪」
 いたずらを見つかったこどものように、少しだけ頬を赤らめたその微笑みに、別の意味でも
どきんとして硬直する祐一。
「ほら、夢じゃないでしょう?」
 硬直がとけて、しばし、沈黙する祐一。
「それに・・・ほら。」
 くすくすわらいながら、秋子さんがのばした指先をたどり、自分の胸や腕に(実は足にも腿にも)
かすかに赤や紫色の、薄い痕を見つける祐一
「アノ コレハ ムシササレ デスカ?」
 違うと知りつつ、機械的に棒読みする祐一。
 秋子さんは、ちょっと意地悪そうに頷く。
「そうかもしれませんね?」
 といいつつも、唇をちゅっと短く鳴らしてみせる。

 流石に、祐一も、現実であることを、認めなければいけなかった。
 手で顔面を覆ったまま、無言で天を仰ぐ。

「・・・・」
「・・・・」

(ノ∀`) アチャー

前回の絵をよーく見ると秋子さんの策略が隠されています

 水瀬秋子女史は、楽しげに、甥の混乱を見つめていたが、やがて、天を仰いでいた祐一が、
反転して、がっくりとうなだれ、ベッドに両手をついて、深い深いため息をつくのを見ると、
気付かれないように、背中側に回り込む。
 数秒後、ぷるぷると震えだし、しばらくして、跳ね起きて絶叫をあげる祐一
「!!!」
 だが、深夜の水瀬家を揺るがしたであろう祐一の絶叫は、背中側から優しく抱きしめた
秋子女史の手によって、未発に終わった。
「・・・駄目ですよ、祐一さん。みんな、起きてしまいます。」
 何故絶叫をあげるのが読めたのか、いやそれ以前に、背中全体に押しつけられた身体の感触に
声をぴたりと止められる祐一。それを確認して、ひとつ笑って祐一の唇を解放する秋子女史。
「あら、それとも、みんなにちゃんと見せた方が良いのかしら?」
「秋子さんっ!!」
 祐一の必死の声に、もう一度、秋子女史はおかしそうに微笑んで見せた。

 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・

「秋子さん・・・なんで、こんなことを・・・」
 数時間前には、考えもしなかった状況に、愕然としてつぶやく祐一。彼の叔母は、
ベッドの隣で、彼の腕を大切そうに抱え込んで、声に出さないで、吐息だけで笑う。
「ごめんなさいね、祐一さん。・・・でも、仕方ないですよね?好きになってしまったら。
 祐一さんも悪いんですよ、こんなに魅力的で、しかも、無防備だったんですもの・・・」
 祐一は、まだ信じられないように、隣で微笑む秋子さんへ視線を移した。シーツの間に隠された、
豊かなバストの頂上がもうほんの少しで見えそうで、あわてて視線をそらす。
「・・・親戚なのに・・・」
「あら、名雪がよくて、私が駄目って、そんなの不公平じゃないですか。」
「不公平って・・・」
 そこで、ベッドの隣のナイトテーブルから、何かを取り出した。
「秋子さん?」
「うふふ・・・こんなものもありますよ。」
 秋子女史の細い指の持つものは、ICレコーダーらしい。
 再生。

 / / / / / / / / / / / / / / / / 

「あの、祐一さんに、お願いがあるんですけど・・・」
「俺に、ですか?」

「つきあって、もらえませんか?」

「秋子さん!俺、未成年ですよ?」

「・・・やっぱり、ご迷惑でしたか?」

「まさか、そんな!」

「ちょっと驚いただけですよ。」

「・・・俺でよければ、おつきあいさせてもらいますよ、秋子さん!」
「嬉しいです、祐一さん!」

/ / / / / / / / / / / / / / / / /

再生終了。

「・・・・・・」
「・・・」
「・・・・・・」
「・・・」
 沈黙。
「もう一度。」
 笑顔で再生ボタンを押す秋子女史。あわてて奪い取ろうとする祐一を、余裕を持ってかわす。
「秋子さんっ!何ですか、これ!!」
「なにって・・・」
 嬉しそうにもじもじする秋子さん。
「私の求愛に・・・・祐一さんが答えてくれたところの・・・録音です。」
「ギャワー!!これは陰謀なのじゃよー!」
 奇妙な悲鳴とともに、脱兎のごとく逃げ出そうとする祐一を、後ろからしっかり抱き留める秋子女史。
「うふふ・・・お気に召さないんでしたら、こんなのもありますよ?」
 秋子女史が取り出したのは、長方形の印画紙・・・一般的に、L版と言われるサイズの、
幾葉かの写真。
「・・・」
「・・・・・」
 内容は、全裸で大の字になっている祐一と、その傍らで満面の勝利の笑みでVサインの
秋子さん。
 さらに、その先数枚は・・・・
「ギャワー!」
 まともな写真屋さんだと現像してくれない内容に、あわてて奪い取る祐一。
「ふぬうっ!!」
 ぐしゃぐしゃに丸めて、一息に飲み込んでしまった。
「あらあら・・・お腹によくないですよ、祐一さん。」
 少しびっくりしたようにそれを眺めて微笑んだ秋子女史は、枕の下から、すっとサブノートパソコンを
取り出した。
「・・・・?」
「近頃のデジタルカメラって、便利ですよねえ?」
 先ほど祐一が食べてしまったはずの画像が、しっかり保存されている。
 かつ、秋子女史が左手を軽く振ると、熟達の手品師がトランプを取り出すように、
ぱっと扇状に焼き増しした「現場写真」が出現する。
「ア・・アキコサン?」
「うふふふ・・・」
 流石に声も出ない祐一を嬉しそうに確認して、そっと、祐一の耳にささやきかける秋子さん。
「・・・納得していただけました?」
「はい、嫌と言うほど・・・」
 笑顔をきらめかせて、また、ぴったりと祐一の身体に、その身体をくっつける秋子女史。
「じゃあ・・・じゃあ、もう一度、今度は、ちゃんといたしましょ?」
「こ、今度?もう一度って・・・んむっ!!」
 祐一の発言は、秋子さんの積極果敢な「行動」によって強制中断を強いられる。
「一度、(して)しまったのでしたら・・・もう、悩んでも無駄ですよね♪」
「秋子さん、それ、女性の側のセリフじゃ・・・うあああっ!」
 
・・・・騒音。
    騒音。
    嬌声。(悲鳴)
    
    休憩。

    騒音。
    騒音。

    (以下、若干省略。)

    暗転・・・・


(なんで・・・こんなことに・・・)
 すっかり満足しきった、無邪気な表情で、祐一の腕をしっかりと確保して
寄り添って眠り続ける秋子さんの、甘い髪と肌の匂いに包まれて、祐一は
答えの出るはずのない問いを、憔悴しきって繰り返していた。
(・・・・駄目だ、わからん・・・・)
 当然というか真理というか、結論を放棄するという結論を得て、彼も、
精神の負荷と、直接の肉体の疲労で、深い深い眠りに落ちていくのだった。



「終章」


 そして・・・・
 相沢祐一の、「複雑な幸福」は、続いている。

「はい、みんな、デザートですよ!」
 夕食後の、水瀬家のリビング。
 呼び集められて駆け寄ってくる子犬たちのように、リビングに集合する少女達。
「わーい、いちごケーキだおー!いちごーいちごー」
「あうー、秋子さんの手作り肉まんー!祐一、とらないでよー!」
「・・・やっぱり、焼きたてが一番だよね・・・・」
 娘と養女達が、それぞれの好物を、歓喜の声とともに平らげて行くのを、
幸福そうな、母親の表情で見つめている秋子女史。
「あれー、祐一、たべないのー?」
「オレノコトハイイカラ スキナダケタベナサイ」
 少女の声に、棒読みで返答する祐一。彼の視線の先には・・・
 この頃ますます、その美貌に磨きのかかってきた、水瀬秋子女史の姿が。
 その、頬に手を当てて微笑む、いつもの姿勢。そこから、手がごく自然に動いて、
艶のある三つ編みを、そっと二度、撫でた。
 秋子さんの主張する「夜の合図」である。
 少しだけ、首を傾げて、幸福そうに、今度は「女性の表情」で祐一を見つめる。
 その唇が、声を出さずに、祐一だけに見えるように、無言で告げる。
(祐一さんの、デザートは・・・・)

祐一のデザートは
 
 祐一は、最後まで確認せず、そこで、ばっと立ち上がって、脱兎のごとく
二階へ駆け上がっていってしまった。
「祐一、どうしたんだろ?」
「さあ?」

 そして・・・・
 今夜も、相沢祐一の部屋のドアが、遠慮がちにノックされる。

 コンコン・・・

 Σ(゚д゚lll)ビクッ!!

「来ちゃいました♪」
   
 そして今夜も、宴は続く。


・二人の時間編 完




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疑惑編へ続く